「スモールウェブ」を旅するツール Wander とは?ファイル2枚で自己ホストできる分散型ウェブ探索ツールの使い方

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キュレーターコメント

アルゴリズムもDBも不要、ファイル2枚で「個人サイトの輪」に参加できる発想が清々しい。IndieWebや静的サイト好きに刺さる一本。

概要

「スモールウェブ」という概念、知っていますか?

X(旧Twitter)、Instagram、YouTube――現代のウェブはほんの一握りのプラットフォームに集約されてしまっている。かつてインターネットには、個人が手作りしたサイトが無数に点在していた。日記、技術メモ、趣味のポートフォリオ……。そういう個人サイトの集合体=「スモールウェブ(small web)」を再発見しようという動きが、静かに広がっている。

今回紹介する Wander は、そのスモールウェブをランダムに旅するための超軽量・分散型ツールだ。


Wander の仕組み:2ファイルで動く分散ネットワーク

Wander の最大の特徴はシンプルさにある。必要なファイルはたった2つ:

wander/
├── index.html   # コンソール本体(UI)
└── wander.js    # おすすめサイト・コンソールのリスト定義

サーバーサイドの処理は一切不要。すべてがクライアント側(ブラウザ)で動作する。仕組みはシンプルだが、その裏にある分散ネットワークの設計が面白い:

  • Wander pages:自分がおすすめする個人サイト・ページのリストからランダムに1つ表示する
  • Wander consoles:他のサイトにある別の Wander コンソールへランダムにジャンプし、そこのリストから次の推薦を受け取る

つまり、1回目のワンダーは自分のコンソールから、2回目はリンクされた別のコンソールから、3回目はさらに別のコンソールから……とホップするたびにネットワークの奥へ潜っていく構造だ。リングトポロジーでもなく、中央サーバーでもない。純粋にファイルとリンクだけで成立するP2P的なディスカバリー体験である。


セットアップ手順:5分で自分のコンソールを立ち上げる

# 1. ZIPをダウンロードして展開
curl -L https://codeberg.org/susam/wander/archive/main.zip -o wander.zip
unzip wander.zip

# 2. index.html と wander.js をウェブサーバーの /wander/ に配置

次に wander.js を編集して、自分がおすすめするサイトと連携コンソールを定義する:

window.wander = {
  consoles: [
    // 他の Wander コンソールの URL を列挙
    "https://example.com/wander/",
  ],
  pages: [
    // おすすめの個人サイト・ページ URL を列挙
    "https://yourfriend.net/",
    "https://cool-blog.example.org/",
  ],
};

これだけ。GitHub Pages、Netlify、さくらレンタルサーバー、何でも動く。コンソールを公開したら、プロジェクトの Issue #1 でシェアすれば、他の人のコンソールからリンクしてもらえる仕組みだ。


なぜ今、こういうツールが面白いのか

Wander が技術的に高度なわけではない。でも、この思想的なアプローチに惹かれる。

  • アルゴリズムに支配されない探索:レコメンドエンジンもフィードランキングもない。「人がおすすめする」という純粋なキュレーション
  • ゼロ依存・ゼロコスト:CDN不要、DBなし、API課金なし。静的ファイル2枚で永続する
  • IndieWeb 的精神:自分のサイトを持つことへの回帰。個人が小さなネットワークの一部になれる

RSSリーダーの復権、Mastodon の普及と同じ文脈で、「大手プラットフォームに依存しない情報流通」への関心は確実に高まっている。Wander はその流れの中でも特にミニマリスト的な解答を出している点が刺さる。

実際に susam.net/wander/ でデモが動いており、「Wander」ボタンを押すたびに知らなかった個人サイトへ飛べる体験は、90年代のウェブサーフィンを思い出させるような、不思議な懐かしさと新鮮さがある。自分のサイトを持っているなら、試しにコンソールを置いてみる価値は十分あると思う。